推拿・治癒理論Ⅳ

脳の筋肉制御(ロック)について

筋肉には、強い負荷がかかったときなどの損傷を防ぐため、極度な伸張や収縮にブレーキをかけるメカニズムがある。この安全メカニズムを担うのが、筋紡錘と腱紡錘である。筋紡錘は伸びすぎを、腱紡錘は縮みすぎをコントロールする。

-筋紡錘の役割がかっけの検査でわかる-
筋紡錘は筋肉を作っている筋線維の中にあるセンサー。筋肉が引き伸ばされると、その長さを感知。脊髄に情報を送る。そして、筋肉が伸びすぎて断裂しないように、縮むように指令を出すのです。これは伸張反射と呼ばれる。

筋紡錘の役割がよくわかるのが、かっけの検査である。足が地面に着かない状態で椅子に座って、ひざ下を叩いて瞬間的に足が上がるかを調べる検査。これは膝外腱反射と呼ばれるものである。

膝外腱を叩くと、大腿四頭筋が瞬間的に引き伸ばされる。これを筋紡錘が感知して脊髄に伝えることで、大腿四頭筋に縮むように指令が出るというわけ。こうして、ひざ下部分が跳ね上がるわけである。

-筋紡錘や腱紡錘が無意識に働いている-
ちなみに、伸張反射は脊髄のレベルごとに分担が決まっている。大腿四頭筋はおもに脊髄の中でも腰椎に伝達。そのなかの第4腰神経が担当している。

筋肉に無理な力がかかると筋肉は傷つかないように硬く縮んで筋肉や関節を守ろうとする。硬くなってしまった筋肉には酸素が入りにくくなる。

-酸素欠乏になった筋肉が酸素不足を脳に伝え、脳が痛みを感じる仕組み-
酸素欠乏になった筋肉に血管を拡張させる物質「ブラジキニン」が発生し、同時に発痛物質を脳に送る。脳が受け取った痛みの物質で私たちは痛みを感じるのである。

あるいは筋肉が硬く伸び縮にしにくくなった状態で関節を動かそうとすると関節が壊れるような力がかかり危険信号としての痛みが出る。

筋肉を護るためのスイッチである筋紡錘からの異常信号によって筋線維が縮む。
この脊髄反射が慢性化して脳が筋肉を制御し続ける状態を筆者は「脳の筋肉ロック」と呼ぶ。
硬くなった筋肉を元に戻すのは簡単である。一旦、緩ませればいいのだ。
時間は1分半(~1分40秒)だ、もしくは拮抗筋を5秒ほど緊張させる。両方併用すればさらに良い結果となる。痛みも危険性も全くない、とても安全な手技である。

脳の筋肉制御(ロック)が解除されると筋肉は元の柔軟さを取り戻し酸素と栄養がちゃんと供給されるようになる。酸素と栄養が筋肉に届くようになるとブラジキニンは消えてなくなり痛みは感じなくなる。

自由に動けるようになって痛みも無く、体も軽く痛みやこり、体調不良が軽減しそれらを感じていたことによるストレスが激減する。

同じように、腱にも腱紡錘というの伸展を感知するセンサーがある。腱紡錘は、これ以上、縮みすぎて負荷がかかると筋肉や腱が断裂するという危険を回避。筋肉を弛緩させる指令を出すのです。これは自己抑制と呼ばれる。

私たちの体は、無意識のうちに筋紡錘や腱紡錘が働いてバランスをとっているというわけだ。筋紡錘と腱紡錘の感度は脊髄が調節している。腱紡錘のほうがセンサーの感度が高いため、日常的には筋紡錘と腱防止が同時に働くことはない。つまり、正常なら筋肉は適度に緩んでいるということだ。

推拿・治癒理論Ⅲ

推拿・治癒理論Ⅲ【推拿伝授07】文責:気功整体・癒しの空間 古田島 正敏

その1.人の進化の過程

 人は進化の過程で、直立2足歩行という能力を獲得した。これは、地球という環境に適応し、他の生物との生存競争に打ち勝つための進化であるが、両手が自由になり、道具の使用や手作業が可能となった。その結果として脳が進化し、他の動物には無い、卓越した知能と能力を手に入れたのある。
この進化の過程は、重力という大きな課題との戦いでもあった。物事には常に2面性がつきまとう。よく効く薬にも副作用があるように、知能と引き換えに、失ったものもまた大きいのだ。
失ったものの一つが血流である。
他の動物では背筋、大腰筋(だいようきん、psoas major muscle)は単に体を支え、移動するためだけの働きがあれば良かったが、2足歩行により、抗重力筋として機能することになった。しかし、時間が足りなかったせいか?、4足歩行時の筋肉をそのまま使ったのである。
その結果、大腰筋は恥骨によって曲げられてしまったのである。地球広しといえども曲がった筋肉を持つ動物は人間だけである。
そのうえ、従来の脚を前に持ち上げる機能に加え、重力に逆らい背中を直立させる機能まで背負わされたのである。脊柱起立筋とともに、大腰筋が担う重力は大変なものであり、腰痛が起きるのは当然の結果である。つまり、人間は腰痛と言う宿命を背負って生まれてきたのである。
しかし、人種によっては腰痛に悩まないで済んでいる人たちがいる。いわゆる西洋人と呼ばれる人たちである。その違いは何か?。

 

その2.日本人と西洋人の進化の過程の違い

狩猟民族と農耕民族の差
NHKスペシャル「病の起源」シリーズで、「腰痛ーそれは二足歩行の宿命か」という番組を見た。人類は600万年前に二足歩行を始め、体重がぜんぶ腰や下肢にかかるようになり、腰痛を患うようになった。また手が肩からぶらさがるようになったため、自由に動かせるが、肩こりも起こるようになった。これがほぼ定説である。しかし、番組はこのことに疑問を投げかけた。
人間が二足歩行をするようになってから、背骨をつくる椎骨のあいだのクッションである椎間板に大きな負担がかかるようになり、腰痛が起きるようになった。体重72kgの人の場合、椎間板にかかる負荷は66㎏ほどだそうだ。それが前傾姿勢をとると、いっぺんに235kgに増えるという。なんと3倍以上になる。それは前傾したからだを支えるために背筋群がつよく収縮し、その力で椎間板が圧迫されるからだ。

 このような前傾姿勢を長く続けていると、椎骨が前方にすべったり、椎間板が後方にはみ出したりする。すると神経が締めつけられて腰背痛が起こる。番組ではメソポタミアの遺跡から出土した人骨に腰痛の形跡が見られることを示していた。一日2時間から4時間ぐらい粉を挽く作業をしていたためだろうという。農耕民族は腰を曲げて仕事をすることが多いので、腰痛が持病になってしまうのだ。

これに対して、アフリカの狩猟民族には腰痛がほとんどないという。一日20~30㎞ぐらい歩いて獲物を追いかけるが腰痛がない。腰痛があるのは、木から落ちたり、崖から落ちたりした者だけだった。研究者は、椎間板が適度に刺激されて水分を保ち、劣化しないからだろうと推測している。同じ姿勢を長時間つづける仕事がダメなのだ。
それでは日本人はどちらに属するのか?
われわれは、悪名高い日教組により、「日本人は農耕民族である」と習った。・・・・・とんでもない大嘘である。

 農耕が始まったのは、西洋の方がはるかに昔である。
農耕の起源について、最新の研究では、約1万5000年前に今の中国の長江流域で、稲作が行われていたと判明しているそうであるが、筆者が中学、高校の頃は、シリアのヨルダン川周辺で始まったとされていた。
通説ではあるが、約1万年前に西アジア一帯で麦の栽培が始まり、約6千年前くらいにはヤギ、羊の牧畜と共に、中央アジア、アフリカ、ヨーロッパに広がり、それぞれの地域にあった農耕が定着したそうである。
日本では、縄文時代後期から弥生時代(約2400年前)に農耕が始まったとされているから、どちらにせよ、日本で農耕が始まるはるか以前の時期である。
ちなみに、約1万5000年前に長江流域で起こった稲作がどんどん拡大し、6千年前に山東半島周辺まで広がったそうだが、日本には影響を与えなかったとのことだ。日本人は農耕民族で西洋人は狩猟民族ってのは、大嘘である。

日本人はマンモスを追って日本に渡来した典型的なハンターであり、鹿や猪を追って生活をしていた縄文時代、メソポタミアでは、すでにパンが焼かれていたし、三内丸山で、野山を駆け巡って狩をしていた頃、ローマには、街にパン屋があった。農耕が始まった時期とか地域には諸説あるが、日本で農耕が行われて穀物を食べるはるか以前より、西洋ではすでに農耕が行われていたのは、紛れも無い事実である。そしてこの歴史の違いがインスリンの質の違いとなり、農耕民族=西洋人には肩凝り、腰痛がないのである。

その3.病気の原因

インシュリンの質の差
 ここで人間の生きる力 「源」 をつくるエネルギーの話を挿入しよう。(筆者と同年齢の団塊世代はこの話は聞いておられない方が多いと思うので挿入しました。)

今、人間の力の 源、エネルギーのもとは、糖の分解で、力が湧いてくるという認識がくずれてきている。
「生きる力を作るエネルギー」 は、二重構造になっている」のである。
細胞には、2つのエネルギーが共存しているのである。従来の、糖の分解で力が湧いてくるという、「解糖系のエネルギー」と、もう一つは 「脂肪やたんぱく質、紫外線や野菜に含まれるカリウムなど様々な原料から出来ているエネルギー、即ち持続力のあるエネルギー」 である。
この無酸素で作る解糖系の生命体はブドウ糖だけで生成されている。つまり、糖は、たんなる、瞬発力のエネルギー源にすぎないのである。少し低体温で働き、瞬発力は出るが疲れやすい特徴がある。このような製造過程のため、身体では細胞分裂をする皮膚や骨髄、筋肉では速筋に多く分布している。危険から一目賛に逃げるときや、奮起するとき、瞬発力を発揮するとき、怒るときにはこのエネルギーが使われる。
次に、有酸素で、持続力のあるエネルギーとは、脂肪やたんぱく質、紫外線や野菜に含まれるカリウムなど様々な原料から出来ている。糖の18倍という高効率でエネルギーを生成している。快適な温度(35度以上)のもとで活発に働き、持続力があって疲れにくいのが特徴である。身体では心臓や脳、骨格筋(遅筋)などに多く分布し、日常生活での動作や、リラックスしているときにもこのエネルギーが使われている。
この二重構造のエネルギーの働きは、人間の成長に伴い変過し、男女の差に関与している。幼児や成長期の子供くらいまでは、瞬発力で分裂を繰り返す解糖系のエネルギーで生きているが、大人になるにつれて、持続力の有るエネルギーで生きるようになると、大人らしい落ち着きが出てくる。
解糖系は骨髄や皮膚の細胞の分裂にも使われているので、子供のときは成長を続けているので身長が伸び、皮膚もツヤツヤだが、大人になると、この持続力のあるエネルギーにシフトするので成長が止まり、老人になると分裂の少ない薄い皮膚になる。
男女の生殖器でも違いがあり、分裂の激しい男性の精子は解糖系が優位で、女性の成熟した卵子には持続力のあるエネルギーが極端に多い。
疲れたり、悩んだり、身体を冷やしたり、食生活が乱れるなど、心身のストレスになることは解糖系のエネルギーの頑張りの世界なので、それらのストレスを受けると低体温、低酸素になり、その状態が長く続くと、病気になりやすい。

何故、ここでこの話をしたかと言うと、糖の分解で得られる解糖系エネルギーは膵臓で作られるホルモン「インスリン」によって筋肉に伝達される。インスリンはまた、血液中のブドウ糖「血糖」の量を適正量に調整する役割を担っている。どうやって調整するかと言うと余った血糖を脂肪に変えて蓄積するのだ。
ここでまた話を挿入しよう。インスリンが「血糖」の量を適正量に調整できなかったらどうなるか?、と言う話である。日本人はこのインスリンの分泌量がもともと少なく、欧米人の半分から4分の1程度しかない。またインスリンの質も悪く糖質の分解能も低い。
何故ならば、西洋人が12,000年糖質を摂取し、インスリンの質もよく、分泌量も多いのに比べ、2,400年しか糖を摂取していない日本人はインスリンの質も悪く量も少ないのである。

インスリンは肥満ホルモンでもあるため、西洋人に比較して体も小さく、スリムである。日本人は例外もあるが、太れない体質なのである

分泌量の少なさ=エネルギー不足 を糖質をたくさん摂取することによって補ってきたのが日本人であるが、この糖質過剰摂取が、“糖化”(glycation)を引き起こすのである。グリケーションとは、過剰な血糖が、筋肉や内臓、皮膚、血管などのたんぱく質を時間をかけてやんわりと焦し、固くする現象である。ほぼ老化の原因でもある。筋肉は約1/3がコラーゲンで出来ているがこのコラーゲンを硬化させるのである。そして、脊柱起立筋や大腰筋の“糖化”=硬化が肩凝り、腰痛の原因である。グリケーションには前期と後期があり、糖の摂取を控えれば、前期にはコラーゲンの代謝期間である1年を経過すれば肩凝り、腰痛は消失する。しかし、後期にはコラーゲンはAGEs(最終糖化物質)となり、不可逆性であるため、元には戻らない。
マーカーとなるのは顔の皺である。顔の筋肉(表情筋)組成はコラーゲンが2/3であるため、糖化しやすく、AGEs化すると元には戻らない。つまり、顔に皺のある年代の方は残念ながら整体を受けて楽にはなっても、肩凝り、腰痛が完治することはないのである。

筆者は、肩凝り、腰痛のみではなく、頭痛や生理痛、ひざ痛、癌など、すべての血流障害とそれに伴う病気は、“2足歩行”と“糖化”が原因であると考える。