推拿・治癒理論Ⅰ

推拿・治癒理論Ⅰ

【推拿伝授05】文責:気功整体・癒しの空間 古田島 正敏

推拿は一言で言えば、骨格筋のうち、動脈の通り道であり、毛細血管が集積する遅筋を緩め、血流を促進する技術であり、その結果は代謝の促進である。
どのような機序で血流が促進し、代謝が促進されるのかを知るためには、筋肉、血管、神経の構造とその作用を知らなければならない。
本章は「治癒理論Ⅰ・筋肉について」である。

筋肉は瞬発力を生み出す速筋と、重力に逆らう方向に働き持久力を生み出す遅筋から構成されている。

骨格筋は、動物の筋肉の一分類であり、骨格を動かす筋肉を指す。

骨格筋は、細長い筋繊維とその細胞間を埋めて束ねる結合組織からなる。

筋繊維(筋線維とも)はそれぞれが一個の細胞で、筋細胞と呼ばれる。筋細胞は多くの核を持っている多核細胞(合胞体)である。 筋繊維の集まりが筋束を構成し、筋束の集まりが骨格筋を構成する。

骨格筋は骨格に対して、関節をまたぐように結びついている。その結びつく関節との関係からは、大きく屈筋と伸筋に分けられる。前者はその関節の曲がる側についており、縮むことで関節が曲がるようになっている。後者はその反対側につき、縮むと関節が伸びる。筋肉は収縮時に力を出すが、自分自身で伸びることはできないので、屈筋と伸筋が互いに拮抗的に働くことで関節の曲げ伸ばしが行われる。
骨格筋の形状はさまざまであり、紡錘筋、羽状筋、半羽状筋、鋸筋などに分類される。
また骨格筋には枝分かれしているものがあり、筋頭(骨格筋の、体の中心に近い部分)の数で分類することができる。筋頭がひとつのものを単頭筋、筋頭が二つのものを二頭筋、三つのものを三頭筋、四つのものを四頭筋と呼ぶ。

筋線維には大きく2種類あり、ミトコンドリアに富んで酸素を利用した持続的な収縮の可能な遅筋線維(Type 1、赤筋、色の原因は、酸素結合性タンパク質、ミオグロビンである)と、ミトコンドリアは比較的少なく解糖系による瞬発的な収縮の可能な速筋線維(Type 2、白筋)にわけられる。速筋線維の中でもやや持続的収縮に向いたものはType 2a、そうでないものはType 2X、Type 2bとさらに細分される。最も速い速筋繊維はType 2bである。遅筋線維、速筋線維はそれぞれ遅筋、速筋と呼ばれることが多い。さらには、両者の性質を備えた中間筋の存在も認められている。
 骨格筋は運動神経に支配されており、運動神経から信号を受けると収縮して力を発揮する。1本の運動神経とそれに支配される筋線維をあわせて運動単位あるいは神経筋単位と呼ぶ。運動神経1本あたりの筋線維の数は、指などの精密な動きをする筋肉では少なく、大腿など大きな動きをする筋肉では多い。骨格筋線維を直接支配している神経線維は、α線維と呼ばれる径の太い(神経伝達速度の速い)ものである。また、骨格筋には筋紡錘、ゴルジ腱器官と呼ばれる感覚器が存在する。

筋肉のエネルギーATP

人の筋肉が動く直接のエネルギーを作るのは、アデノシン3リン酸(ATP)である。
アデノシン3リン酸が分解されてアデノシン2リン酸になるときに出るエネルギーによって人の筋肉は動いている。

 筋トレや短距離走など無酸素運動でも、ジョギングや遠泳など有酸素運動でも、アデノシン3リン酸から筋肉を動かすエネルギーを作るのは同じである。

体内にあるATPの量は少なくて運動すると、ATPは1~2秒で無くなる量である。
エネルギーのATPは1~2秒動いたら無くなる量であるが、1~2秒動いてすぐ動けなくなる人はいない。
これは、筋肉が動くとATPが使われる一方、体内ではATPを作り続けているからである。ATPを作る工程によって、無酸素運動と有酸素運動が分かれる。
ATPの作り方を1枚の図で書くと左図のようになる。
ATPの作り方は、ATP-CP系、乳酸系、有酸素系の3つだけで、ATP-CP系と乳酸系がいわゆる無酸素運動になって、短時間の運動で機能する。
ATP-CP系と乳酸系だと、ATP-CP系のほうがより短時間の運動で使われる。

 

①ATP-CP系
ATP-CP系のATPは上で紹介したアデノシン3リン酸、CPはクレアチンリン酸のことである。
運動を始めると、筋肉の収縮のためにATPが使われていく。
一方で、ATPがADPに分解されるのと同時に体内のクレアチンリン酸が分解されていく。
クレアチンリン酸が分解されることで得られるエネルギーによって、ADPがATPに再合成される。
ATPが使われるとクレアチンリン酸が分解されて、そのエネルギーを使って再びATPを作る。
そのため、ATP-CP系と呼ばれる。
とにかく反応が早く運動開始時や短時間で強度の高い運動で活躍するが、クレアチンリン酸の貯蔵量はそれほど多くなくATP-CP系だけだと10秒と持たない。ただし、実際には、ATP-CP系と同時にほかの機構も動いて、ATPとクレアチンリン酸が作り続けられているのでATPが尽きたり、クレアチンリン酸が尽きたりすることはない。
このクレアチンリン酸を体内に多く貯蔵しよう!という目的でクレアチンサプリメントも出ている

②乳酸系
つぎに、乳酸系である。解糖系、乳酸解糖系などとも呼ばれる。
この反応では乳酸はATPを作るエネルギーにはなっていないが、でも、乳酸系と呼ばれる。
グリコーゲンやブドウ糖からブドウ糖6リン酸が作られて、ピルビン酸になるときにエネルギーが得られる。ピルビン酸の状態だと体に貯めにくいので、乳酸が体に貯まっていく。
この乳酸は「乳酸が貯まる。」のように疲労がたまる意味で使われているが、本当は乳酸は、ピルビン酸になって有酸素運動のエネルギー源になる。
急激な運動をすると、乳酸が貯まっていくが、乳酸が溜まると、乳酸系の反応が進みにくくなって体がしんどくなる原因になる。筋肉中にたまった乳酸は筋肉を収縮するのである。筋肉が縮むと血行が悪くなり疲労を感じるのである。

最後に有酸素系である。
まず、ピルビン酸と脂肪からアセチルCoAが作られる。
乳酸系の運動で作られた乳酸もピルビン酸に変化する。
アセチルCoAは、アセチルコエンザイムエーのことである。
アセチルCoAが、ミトコンドリア内のクレブス回路に入っていく。
このクレブス回路と電子伝達系とよばれるシステムによって、エネルギーが取り出される。
図を見てもらうと、酸素が入っているが、ATP-CP系や乳酸系では酸素は書かれていない。文字通り、「有」酸素ということで、脂肪がエネルギーになる。
クレブス回路は、別名TCA回路やクエン酸回路とも呼ばれる。

ATPを作るシステムを紹介してきたが、3種類あるということは、3種類に特徴があるということである。
ATP-CP系>乳酸系>有酸素系の順でエネルギーの供給速度が速く瞬発的な運動に適している。有酸素系は瞬発的な運動に向いていない。
一方、供給時間は逆で、ATP-CP系は7秒、乳酸系は33秒、有酸素系は無限大である。有酸素系は呼吸により取り込んだ酸素を使うし、脂肪があればエネルギーを作り出せるからエネルギー供給は無限になるが、酸素を運ぶのは血流であるから、血流の悪い人は有酸素系エネルギーを十分使えず、脂肪が燃えにくいということになる。

 

 

推拿の套路

推拿の套路     【推拿伝授02】文責:気功整体・癒しの空間 古田島 正敏

套路:套路とは中国武術における練習方法のひとつで、連続的な攻撃方法、防御方法、立ち方、歩き方、呼吸法、運気法などを総合的に盛り込んだ一連の身体動作の流れを指すが、推拿においては、標準的な施術の流れ(順番)の事である。筆者の推奨する「現代理学推拿」においては、医学における血流、神経経路、発達生理学における体幹、東洋医学における“気”の流れに鑑み、頭部から骨盤まで(太陽膀胱経)を上から下へと施術するのを原則とする。

事前診断:施術にあたり、下記の状態をチェックする。(体幹より、末梢の方が異常がわかりやすい)足の長さ、下肢の関連痛、膝、梨状筋、腰の張り、肋骨と骨盤間の隙間、脊柱起立筋の固さ、肩甲骨周りの状態、肩関節周辺炎(脇の下等)、上部頚椎ズレ、前斜角筋、胸鎖乳突筋、瘀血の有無や上腕を挙げた時(特に撫肩に注意)や手をグーパーした時の掌の色の変化。また、体質による症状の現れ方、(糖化の進み具合やインスリン抵抗性等)にも注意が必要である。

施術の順序:上から下へ、中央から外側へを原則とする。
筆者が行う標準套路(60分):

太陽膀胱経を緩める
   一回目

①事前診断:の後、頭部(百会)から頚椎の終わり(大椎)まで親指を交互に使い“気”を導引する。

 

②肩の中央から首筋際への関節滾法(右側から、または長い脚の方から始める。)

③肩から胸椎末端までの関節滾法。

④腰椎から腸骨稜への標準滾法

⑤腰椎から肩までの標準または拳滾法(下から上へ戻る)。

⑥反対側の肩を推法・柔法で解す。

上記②~⑥を反対側にも行う。

⑦方形枕で肘を持ち上げて、棘上筋を緩める。(二回目が終わるまでそのまま)

二回目

①一回目と同じく、②から⑤までを行った後、「カエル脚」を行う。(90秒)

②腰方形筋、背筋、僧帽筋を柔法で解す。

③反対側の肩を推法・柔法で解す。

④上記①~③を反対側にも行う。

⑤方形枕で左右の肩を持ち上げ、肩甲骨を浮かす。(三分程度)再び肘に枕を当てる。

三回目

①二回目と同じく、一回目の②から⑤までを行なう。手技は緩み具合に応じて指先推法や魚際柔法などを併用してを使う。

②脚部(太陽膀胱経)を標準滾法で解す。固い場合には前腕推法などを併用する。

③「カエル脚」(90秒)を行った後、腰方形筋、背筋、僧帽筋を柔法で解す。

④上記①~③を反対側にも行う。

仰向けで両側膝倒しを行い、大腰筋における脳の認識を検査:

      左右のバランスが悪い場合は、快方向に90秒保持後、強めの操体法で緩んだことを認識させる。

陽明胃経、大陰脾経を緩める

      拿法、操体法で緩める。

頚部の検査

      柔法、差法を使い、警部を緩めた後、上部頚椎の状態をチェックし、ズレがあれば治す。

(頚椎後部を開きながら、棘突起と首全体を逆方向に回転させるよう適度の圧力を加えたまま、頚椎後部を閉じる)

 

施術上の注意:下記の要件(インスリンと糖化の関係)に留意して施術の参考とする。

年齢差:年齢を重ねるほど、筋肉と血管、内臓(主としてコラーゲン)は糖化が進み固くなる。

固い筋肉、血管、内臓は、血流を圧迫し、代謝を遅滞させ、体を冷やし、各種の不調を引き起こす。

男女差:女性は男性に比べ、速筋、遅筋とも少なく、各種不調が敏感に表れる。(例:偏頭痛は女性に多い)特に高齢者は、大腰筋、外旋筋の衰えにより、下半身の血流が悪くなり膝痛などを患うことが多い。

体質:インスリンの量、質、およびインスリン抵抗性により、体の固さが異なることを理解する。

例1)インスリンの量の多い人、質の良い人は肥満体が多く、血管、筋肉は柔らかい、したがって肩凝り腰痛は少ない(西洋人体型)が、その逆は血管、筋肉はが固く、痩せ型で食べても太らない(日本人体型)、このタイプは冷え性で肩凝り、頭痛、腰痛、生理痛、ひざ痛に悩まされる。

インスリン抵抗性の高い人は肥満でも体が固く、肩凝り腰痛が多いが筋肉量が多く、冷えを感じにくい(特に男性)場合が多いが老年期には冷え性となる。

10.筋の収縮

§1.骨格筋の構造

 筋は興奮膜によって覆われている上に、細胞質内に収縮のためのタンパク質を持っている。筋は組織的に、横紋筋(striate muscle)と平滑筋(smooth muscle)にわけられる。前者に骨格筋・心筋、後者に内臓筋が属す。この章では主として、骨格筋について述べる。
骨格筋は多数の筋線維(muscle fiber; muscle cell)から成り立つ。筋線維は直径10~100μ、長さは数μ(昆虫の飛翔筋)から1m(キリンの筋)にわたる。筋線維は形質膜である筋鞘(scrcolemma)、筋形質arcoplasma)、及び数百~数千ある筋原線維(myofibrils)から成立つ。

(図10-1) 肉眼から分子レベルまでの骨格筋構成の模式図。F,G,H および I は 指示されたレベルの横断像を示す。(Sylvia Colard Keeneによる図)。

骨格筋線維を位相差顕微鏡下に見ると横紋がみられ、光を強く複屈折するA帯
と光を弱く複屈折するI帯に分けられる。A帯の中央部には比較的明るく見えるH帯、I帯の中央には細い暗い縞として見えるZ帯がある。Z帯間の長さは2μで筋節と呼ばれる。
これらの横紋構造は、電子顕微鏡及びX線解析で調べた結果、太さの異なる2種類の筋フィラメントが規則正しく配列することによって生じることがわかった。すなわち、A帯のうち、H帯では太いフィラメントのみ、H帯以外では太いフィラメントと細いフィラメントが存在する。I帯は細いフィラメントのみが存在する。このことから、太、細2種のフラメントは、図10-1のように配列していると考えられている。
太いフィラメント(直径100Å、長さ2μ)は、一端がふくれ、オタマジャクシ
状のミオシン分子が約200重合したものである。その頭は400Åごとに細いフィラメントに向かって突出している。その先端にはATPが存在する。細いフィラメントは(直径60~70Å、長さ1.6μ)、球状のアクチン分子がトロポミオシン骨格の上に鎖状につながり、それがさらに2本からみあって、2重らせん構造となったものである。さらに所々に球状のトロポニンがある。
(これが、アクチン、ミオシンの相互作用を調節している)このフィラメントの
中央部がZ帯に付着している。
更に筋には小胞体(endoplalsmic reticulum)が発達している。(図10-2)
Z帯の所で、形質膜から横行小管(transverse tubules)が、筋の長軸に垂直に
線維内部にはいる。一方、筋小胞体は、筋フィラメントに沿って筋の長軸方向に
走り、後槽(terminal cisterm)となって、横行小管と接している。両者はつながってはいない。この接触部を三連構造(triad)という。

<図10-2>両生類骨格筋の筋細線維周囲の筋小胞体の分布の模式図。縦向きの 筋小胞体は終末槽と呼ばれる横向き成分と連続している。筋細胞膜から内方への び出す細い横細管(T細管)は2つの終末槽により狭まれ、網状をなす筋小胞体のい わゆる三ツ組をつくる。この位置と筋細線維の横紋様式との関係は動物の種類に よって異なる。カエルでは、ここに求されるように示されるように、三ツ組はZ 線のレベルにある。哺乳類の筋では各筋節に2個あり、A-1境界に位値してい る。(L.Peachey,: J.Cel1 Biol.,25:209,1965にしたがって改写。D.W.Fawcett and S.McNuttから.Sylvia Colard Keeneにより描かれた) 

§2.筋の興奮と収縮

 音血動物の筋線維が、終板を介して、或は、直接に興奮したとき、その興奮は約5m/秒の速度で電導し、筋線維全体に広がる。約3ミリ秒遅れて収縮が生じる。1回の興奮によって生じた収縮を単収縮(twitch)という。
単収縮には、筋の一端を固定し、他端に荷重をつけ、自由に動くようにした状態で収縮させる等張性単収縮(isotonic twitch)と、筋の両端を一定の長さに固定して収縮させる等尺性単収縮(isometric twitch) がある。後者の最大張力
発生までの時間は、前者の最大単縮発生までの時間より早い

(図10-3)等尺性収縮で最大張力に達する時間は、0筋によって異なる。速く動かなければならない筋は速い。逆は逆。眼筋は10msec、腓腹筋は30msec、ヒラメ筋は100msecである。

<図10-3>活動電位(A)、等尺単収縮(B)と等張カ性単収縮(C)の時関 関係の比較 等尺性収縮の方が最大値に達する時間が早く、全体の持続時間が長い。B中の点 線は遅い筋のもの。 

§3.興奮-収縮連関

 形質膜に生じた活動電位が収縮を引き起こ0すとき、収縮の開始は、活動電位発生より数ミリ秒きり遅れない。この時間はある物質が形質膜から筋原線維まで拡散していくには小さすぎるという。そこで上述の構造を基にして、形質膜の興奮発生から、筋原線維の収縮までの過程は、次のように考えられている。
a)筋の形質膜に興奮が生じる。
b)その興奮は横行小管を介して筋線維の深部に伝えられる。
c)その結果、筋小胞体内のCa++が細胞質内へ遊離する。
d)細胞質内のCa++濃度が10-8Mまで高められると、Mg2+の存在下で
ミオシンの頭にあるATPが活性化される。
静止時、①トロポニンはアクチンと結合、また、②トロポミオシンは
アクチンとミオシンの頭が結合する位置を覆っている。
Ca++によって①の結合が緩み、それによって②の覆いがなくなる。
e)そのエネルギーによって、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが
相互に滑走(slide)し、その結果収縮が生じる。

<図10-4>Caイオンによる筋収縮の開始。連結橋(ミオシンの頭)はアクチ ン上の結合部(斜線部)に付着し、CaイオンとトロポニンCの結合によりトロ ポミオシンが側方へ移動したとき、回転する。(Modified from Katz AM: Conges- tive heart failure. N Engl J Med 1975:293:1184.) 

f)脱分極が終了すると、Ca++が筋小胞体内に能動的にくみ取られ、筋形質内の
Ca++が10-8Mまで下がる。この過程は、ATPの存在下に於て初めて可能
となる。(ATPの弛緩作用)そのため、ミオシンの頭は、アクチンから離れ、
相互位置をもとにもどす。(図10-5,6)
ミオシン分子の2つの頭の機能 医学のあゆみ 165(8)7317321978

<図10-5>説明なし <図10-6>説明なし 

§4.興奮-収縮連関過程の実験的証拠

 イ)横行小管を介しての興奮の波及は、次のことからいわれる。
a)微小電極を使って、筋表面を電気刺激する(図10-7)。いま、電極尖端がz膜近傍にある時は、刺激の強さに応じて次第に内部に広がる局所興奮が
生じる。刺激部がz帯から離れると何の効果もあらわれない。このことにより、z帯に開口部を持つ横行小管が興奮の深部波及に役立っている、と推論される。
b)グリセリン等で小管系を破壊すると、興奮は生じるが収縮は生じなくなる。
ロ)収縮と弛緩が、Ca++の筋形質内の増加と現象とに密接な関連を持っていることは、次のことからわかる。ferritin(Acquorin)は、Ca++の濃度が増加するに従って、その傾向が増加する性質を持っている。筋にFerritinを与えた後、脱分極させると、蛍光が急増する。このことから、Ca++が筋形質に増大していることがわかる。また、弛緩した筋の終槽から高濃度の
Ca++が検出されている。
ハ)ATP、Mg++がなければアクチンとミオシンの結合が生じない
(グリセリン筋の実験)。
ニ)アクチン、ミオシンフィラメントの滑走;等張性収縮をさせながら、
位相差顕微鏡で筋線維の横紋構造を見ると、次のようになる。A帯は収縮、
弛緩時でもその長さ一定。Hたいのみ収縮時にその長さが小となり、それと
同じ長さだけI帯が狭くなる。このことは、フィラメントの長さは変化せず、
互いの位置が滑走したことによってずれた証拠となる。
ホ)ATPの弛緩作用;エネルギーの供給が不足して、筋のATP濃度が
減少すると、筋は弛緩しなくなり、硬直(rigor)におちいる。

<図10-7>カエルの筋線維表面の脱分極による局所収縮。収縮は、c図に黒い 点で示されたZ帯に沿って刺激した時にのみ生じた。 

§5.緊張と張力

 筋収縮のパターンは種々条件で変わる。以下数節にわたりこれについて述べる。
静止している横紋節に負荷を与えると、始めの長さの1.8~2.0倍まで伸ばすことができる。この時伸展の程度に応じて張力が発生する。これを静止張力(Passivetension)という。伸展-張力の関係は、伸展のごく狭い範囲を除いて、Hookの法則に従わない。すなわち、ヒステリシスをもっている。これは筋に弾性と共に粘性があるためである。
筋が収縮する際に発生する張力を、活動張力(active tension)という。
活動張力は筋長が極端に小のときも、極端に大のときも小さい。その中間の長さで
最大の張力を発生する(図10-8)。

<図10-8>張力長さ曲線(静止伸展曲線)と等尺性最大張力 

 このことは、筋フィラメントの構造から次のように説明できる(図10-9)。
筋長の長いときは、アクチンとミオシンフィラメントが重なっている部分が
ほとんどない。従って、両者間に生じる橋の数が小となり、力の発生が少ない。
また、筋長が極端に短いときは、アクチンとミオシンフィラメントが中央に入りすぎて互いに干渉するか、ミオシンフィラメントがZ帯にぶつかるため、力の発生が少ないと考えられている。

<図10-9>種々の筋節の長さにおいて発生する最大等尺性張力 “筋長固定法length clamp”の実験により得られた一定の筋節の長さに対する等尺 性張力の関係。  縦軸:最大の張力を1.0とした場合の等尺性張力の相対値。  横軸:単一筋節の長さ。右方の挿入図A・B・C・D・Eに示された筋節長は 横軸上の矢印で示されている。(説明本文)Gordon.A.F.Huxley, Julianによる)。 

§6.筋の短縮速度と張力

 筋収縮の速度と発生する張力は、反比例する(図10-10)。筋がごくわずかに短縮するときは、発生する張力大であり、負荷が僅かなときは、短縮が速い。
これは、滑走速度が速いときは、ミオシン、アクチンフィラメント間に単位時間内に形成される橋の数が少ないためであると考えられている。

<図10-10>筋短縮速度と負荷(荷重)との関係 

§7.収縮の加重・強縮(tetanus)

 筋の張力発生は、筋のくりかえし興奮によって大きく変化する(図10-11)。
単収縮では、約5-10msecで張力が最大に達し、その後もとにもどる。もどる前にもう1つの刺激を加えると、単収縮より大きな収縮が得られる。この現象を単収縮の加重(summation)という。
刺激の数を増し、5~10回/秒の刺激を与えると、加重が次々に生じ連続的な大きな収縮が生じる。これが強縮である。一見変動のない一様な収縮(図10ー11、
125回/秒)を完全強縮(complete tetanus)、単収縮が融合せず、動揺するのを不完全強縮(incomplete tetanus)という。完全強縮時には、張力発生は単収縮時の
2~5倍に達し、収縮量は全長の50-80%に達する。このような強縮が、生体内で生じている筋収縮のパターンである。
強縮時の張力発生が大きくなることは、弛緩する前に、また短絡が生じるので、
筋フィラメント相互の移動がないためであると説明されている。

<図10-11>単収縮から完全強縮に至る加重 

§8.反復刺激と筋疲労

1秒1回程度の頻度で筋を直接刺激すると、収縮高は初めの2~3回、次第に
増大する。これを階段現象という。筋形質内のCa++の増加による興奮-収縮連関の促進による。
更に、筋の繰り返し刺激を続けると、短縮高は次第に減少し、同時に収縮弛緩過程の遅延が生じる。この現象を筋の疲労という。このような現象は、筋への酸素供給が悪いとき早く起こり、又元に復帰するには酸素の供給が絶対に必要である。
疲労した筋では、
(a)膜の興奮性低下、
(b)興奮-収縮連関の能率低下、
(c) 化学エネルギーを機械的エネルギーに変換する効率の低下、
(d)エネルギー源の枯渇、
(e)乳酸発生により代謝全体の遅延
がみられる。
J gen Phyusiol. 72:593-606,1978.

§9.異常収縮

(イ)律動性収縮(rhythmic contraction):Ca++を除いた等張性食塩水に筋を
入れると、Ca++ induced K+ permeability が消失し、形質膜のNa+に対する
相対的透過性が増大し、反復興奮が生じる。その結果、収縮が律動的に現れる。
これを律動性収縮という。
上皮小体機能が低下すると、血中のCa++濃度が低下する。従って、筋は反復興奮し持続的な興奮が生じる。これをテタニー(tetany)という。
歯をくいしばり、咽頭筋、呼吸筋の持続的収縮のため窒息する。手はテタニー
特有な助産姿勢(Trousseau’s sign)をとる。
(ロ)拘縮(contracture):活動電位なしで生じる持続性、非伝播性の可逆的収縮を言う。KClの等張液につけると形質膜の持続的脱分極により拘縮が生じる。
これは2~3分で消失する。また、カフェインは筋小胞体に直接作用して、
Ca++を筋形質内に遊離させ拘縮が生じる。そのほか、アセチルコリン、
キニン、ニコチン、ヴェラトリン、酸、アルカリ等によって生じる。
(ハ)硬直(rigor):筋実質の崩壊により筋が硬くなり、興奮性を失った状態を
硬直という。硬直には次にものがある。
i) 熱硬直(heat rigor) 40~60Cの加温によって生じる。
ii) 水硬直(water rigor) 筋を水にひたすと、水が筋内に入って硬直を起こす。
iii)死後硬直(rigor mortis)死後通常2~3時間後に生じる。グリコーゲンの
分解による乳酸の生成、及びATPが加水分解されなくなるために、アクチン
とミオシンが、結合したままになることによるという。その後、24~48時間
たつと、蛋白の変性により緩解が生じる。
(ニ)その他の筋疾患。不動作性萎縮(disuse atrophy)のときは、筋張力が低下する。
反対に、活動性肥大(functional hypertrophy)がある。筋線維の数は一定で、
一本一本の筋が太くなる。

§10.筋収縮のエネルギー

筋収縮のエネルギーは、すべての生体のエネルギーがそうであるように、リン酸結合としてたくわえられる。すなわち、解糖酸化の結果生じた高エネルギーのリン酸結合は、ATPとなり、さらにクレアチンリン酸として貯蔵されている。
このリン酸結合に蓄えられたエネルギーはエネルギー伝達体を介して筋肉の収縮を起こす。化学的エネルギーから機械的エネルギーの効率は20~25%であり、あとは熱となり体温の維持に役立っている。(図10-12)

<図10-12>説明なし 

§11.平滑筋

平滑筋細胞は、横紋筋より一般に小さい。直径4-8μ、長さ20~100μ
(妊娠子宮15μ*500μ、血管2μ*80μ)。また、筋フィラメントは規則正しく
配列せず、横紋構造を欠く。
平滑筋は、内臓平滑筋(visceral smooth muscle; 単一平滑筋 unitary smooth
muscle)と多単位平滑筋(multi-unit smooth muscle)とその中間のもの(精管vas
deferens)に分別される。

§12.単一平滑筋

胃、腸管、子宮、尿管などの平滑筋。筋細胞管に電気抵抗の低い接合部(gap
junaction or nexus)が存在し、シンシチウム(syncytium;合胞体)として働く。
常に活動しているので、真の静止膜電位不明。比較的非活動時で-50~-60mV
である。活動電位は大きさ90mVに達することもあり、また1~3mVのように小さなこともある。0.05~0.5secのplateauが見られることもある。活動電位はCa++
スパイクである。一個の細胞に発生した活動電位は gap junction を介して全細胞に波及する。この種の平滑筋においては種々因子が膜電位に影響をあたえている。
1)伸展すると筋は脱分極する。
2)ある程度の神経支配がある。アセチルコリンで脱分極、アドレナリン又は
ノルアドレナリンでは脱分極(α型)、あるいは抑制(β型)。
3)ホルモンの影響を受ける。例えば子宮筋は、エストロゲンで膜電位は減少し、
プロゲステロンで膜電位は増大する。
4)自動性をもつ。歩調とり細胞があり、それが引金となって興奮が生じると
考えられるが、特定の歩調と利細胞の分化は見られない。
収縮はCa++を介して生じるが、小胞体を欠いているので、活動電位が発生
してからCa++が細胞内に流入するため、活動電位発生から収縮開始までに約
200msecかかる。
平滑筋は一定の強さの短縮状態を示している。これを緊張という。緊張は
多くの場合は、繰り返し生じる活動電位による収縮の加重によって生じる。
興奮の繰り返し頻度が低ければ周期的収縮を引き起こす。

§13.多単位平滑筋

立毛筋、毛様体筋、瞬膜、動脈の筋。
1)筋細胞管の接合部がない。興奮非拡散
2)一本の交感神経線維は多数の筋細胞を支配。しかも他の交感神経線維からの
支配も受ける(close contact)。自動性がなく、交感神経の指令によって興奮
する。

§14.平滑筋の収縮

一般に収縮の時間経過が遅い。アクチン、ミオシン、トロポミオシンは存在
する(トロポニンはない)。アクチン・フィラメントは見られる。ミオシンは、
フィラメントは見られず、軽鎖(light chain) として存在する。収縮・弛緩は、
次のようにして生じると言われている。
a)ミオシンは脱リン酸化して存在(これでF-アクチンと反応しない)。
b)いま、Ca流入。カルモジュリン(Calmodulin)と結合。すると、
c)ミオシン軽鎖リン酸化酵素(myosin light chain kinase)を活性化。それで、
d)ミオシンをリン酸化(ATPと結合)。
e)リン酸化したミオシンは、F-アクチンと結合。->収縮。
f)Ca濃度が、10-7 M 以下。カルモジュリンからCa離れる。不活性化。弛緩。

※図の説明
図10-1 肉眼から分子レベルまでの骨格筋構成の模式図。F,G,H および I は 指示されたレベルの横断像を示す。(Sylvia Colard Keeneによる図)。

図10-2 両生類骨格筋の筋細線維周囲の筋小胞体の分布の模式図。縦向きの 筋小胞体は終末槽と呼ばれる横向き成分と連続している。筋細胞膜から内方への び出す細い横細管(T細管)は2つの終末槽により狭まれ、網状をなす筋小胞体のい わゆる三ツ組をつくる。この位置と筋細線維の横紋様式との関係は動物の種類に よって異なる。カエルでは、ここに求されるように示されるように、三ツ組はZ 線のレベルにある。哺乳類の筋では各筋節に2個あり、A-1境界に位値してい る。(L.Peachey,: J.Cel1 Biol.,25:209,1965にしたがって改写。D.W.Fawcett and S.McNuttから.Sylvia Colard Keeneにより描かれた) 

図10-3 活動電位(A)、等尺単収縮(B)と等張カ性単収縮(C)の時関 関係の比較 等尺性収縮の方が最大値に達する時間が早く、全体の持続時間が長い。B中の点 線は遅い筋のもの。 

図10-4 Caイオンによる筋収縮の開始。連結橋(ミオシンの頭)はアクチ ン上の結合部(斜線部)に付着し、CaイオンとトロポニンCの結合によりトロ ポミオシンが側方へ移動したとき、回転する。(Modified from Katz AM: Conges- tive heart failure. N Engl J Med 1975:293:1184.) 

図10-5 説明なし 

図10-6 説明なし 

図10-7 カエルの筋線維表面の脱分極による局所収縮。収縮は、c図に黒い 点で示されたZ帯に沿って刺激した時にのみ生じた。 

図10-8 張力長さ曲線(静止伸展曲線)と等尺性最大張力 

図10-9 種々の筋節の長さにおいて発生する最大等尺性張力 “筋長固定法length clamp”の実験により得られた一定の筋節の長さに対する等尺 性張力の関係。  縦軸:最大の張力を1.0とした場合の等尺性張力の相対値。  横軸:単一筋節の長さ。右方の挿入図A・B・C・D・Eに示された筋節長は 横軸上の矢印で示されている。(説明本文)Gordon.A.F.Huxley, Julianによる)。 

図10-10 筋短縮速度と負荷(荷重)との関係 

図10-11 単収縮から完全強縮に至る加重 

図10-12 説明なし 

推拿伝授にあたって(会員向け投稿)

※本文は2月11日の勉強会でテキストとして使ったものです。
推拿とは:
 推拿とは、中国において古代より発展した疾病の于技療法であり、はじめは按摩と呼ぱれ、3000年以上の歴史を誇る中国固有の治療の医術である。
推拿は、手をいた手法により治縦を行う中医学の治療の一部門であり。その治療は一般に傷筋骨の整復が知られているが、中国では内科系統の疾病に対する治療も多く行われ、その治療範囲は広く効果も人きい。
推拿による内科系統の治縦は、古くから行われている一般的な治療決で、消化器系統、呼吸系絞、循環系統、神経系統など身体全体にわたって広範囲の治療に用いられている。
その作用機制は、施術者が患者の体表面上あるいはつぼに手法を行い、その作用により人体内部の生理、病理状況を調節し治療効果に至るものである。施術者は具体的な病状に基づき各種の技法を運用し、その“手法”をとおして生み出された外力により、患行の体表の特定部位や穴位上にある効果を作り上げる。その種の効果が体内に浸透して、生体の各器官や内部臓器に作用しその関連する各身体機能を良性方向に転換し、体内の臓腑機能を調整して治療作用を起こす。
現代ではこのような作用原理は、身体組織や各器官についての各種実験や臨床の結果をもとにより広く研究され、推拿はさらに発展しつつあるが、残念ながら専従の研究者もおらず、学会など研究発表の機会もないため、今後の課題として、統一した「作用原理」と「エビデンス」が求められると思われる。

滾法とは:
推拿(すいな)は多様な手技があることが、特徴の一つでもあるが、その中でも代表的な手技として「滾法(こんぽう)」と呼ばれるものがある。(滾の字は、本来の部首は、「氵」ではなく「扌」だが、日本のPCでは、漢字変換が出来ないので滾法と表記する。
筆者の推拿の流儀は「上海推拿(しゃんはいすいな)・滾法派」と称し、滾法を多用する。
写真は、手を軽く握りこぶしにして、力を抜いた状態でころがす技法(標準滾法)である。

指圧のような力技ではないので施術者には全く負担がかからない。”
施術時、手背の小指側から前腕を回旋しながら押しころがし、同時に手指関節の屈伸動作を行な
う。
ころがす頻度は1分間に120回が最適とされている。
圧力が大きく接触する面積が広いので、肩背部、腰部、四肢部と広い範囲に適する。血行を促進し、関節を柔らかくし、筋肉の痙攣や痛みを取り除き、慢性疾患の症状に多く用いられる。推拿の治療では特に多用される手技である。
他に、拳滾法関節滾法前腕滾法などがある。
非常に難易度の高い技術で、推拿を医療として取り扱う中国では、この滾法の練習を在学中の5年間毎日訓練するという。
練習には写真のような、中に米を入れた滾法枕を用いる。

 

 

①肩の力を抜く。
②手の甲をつけるようにゴロンと転がす。

※肩が下がらないように。腕に力が入らないように。
③押さない!たたかない!すべらせない!を守る。

慣れてくると同時に両手でも出来る。

不必要な力をかけず行なうことで、心地良い刺激をしっかりと与えることが出来る。

特に背面を流れる太陽膀胱経を滾法で流せば、あらゆる疾患に効果があるといわれている。

肩こりや腰痛、手足のしびれなどにはもちろん内臓疾患やアトピー性皮膚炎などにも適用される。

推拿の基本はまず滾法から、練習・実践あるのみ、上手な滾法が出来るようになるには、近道はない。

 

 

 

 

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研究会代表の古田島 です。

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