推拿・治癒理論Ⅳ

脳の筋肉制御(ロック)について

筋肉には、強い負荷がかかったときなどの損傷を防ぐため、極度な伸張や収縮にブレーキをかけるメカニズムがある。この安全メカニズムを担うのが、筋紡錘と腱紡錘である。筋紡錘は伸びすぎを、腱紡錘は縮みすぎをコントロールする。

-筋紡錘の役割がかっけの検査でわかる-
筋紡錘は筋肉を作っている筋線維の中にあるセンサー。筋肉が引き伸ばされると、その長さを感知。脊髄に情報を送る。そして、筋肉が伸びすぎて断裂しないように、縮むように指令を出すのです。これは伸張反射と呼ばれる。

筋紡錘の役割がよくわかるのが、かっけの検査である。足が地面に着かない状態で椅子に座って、ひざ下を叩いて瞬間的に足が上がるかを調べる検査。これは膝外腱反射と呼ばれるものである。

膝外腱を叩くと、大腿四頭筋が瞬間的に引き伸ばされる。これを筋紡錘が感知して脊髄に伝えることで、大腿四頭筋に縮むように指令が出るというわけ。こうして、ひざ下部分が跳ね上がるわけである。

-筋紡錘や腱紡錘が無意識に働いている-
ちなみに、伸張反射は脊髄のレベルごとに分担が決まっている。大腿四頭筋はおもに脊髄の中でも腰椎に伝達。そのなかの第4腰神経が担当している。

筋肉に無理な力がかかると筋肉は傷つかないように硬く縮んで筋肉や関節を守ろうとする。硬くなってしまった筋肉には酸素が入りにくくなる。

-酸素欠乏になった筋肉が酸素不足を脳に伝え、脳が痛みを感じる仕組み-
酸素欠乏になった筋肉に血管を拡張させる物質「ブラジキニン」が発生し、同時に発痛物質を脳に送る。脳が受け取った痛みの物質で私たちは痛みを感じるのである。

あるいは筋肉が硬く伸び縮にしにくくなった状態で関節を動かそうとすると関節が壊れるような力がかかり危険信号としての痛みが出る。

筋肉を護るためのスイッチである筋紡錘からの異常信号によって筋線維が縮む。
この脊髄反射が慢性化して脳が筋肉を制御し続ける状態を筆者は「脳の筋肉ロック」と呼ぶ。
硬くなった筋肉を元に戻すのは簡単である。一旦、緩ませればいいのだ。
時間は1分半(~1分40秒)だ、もしくは拮抗筋を5秒ほど緊張させる。両方併用すればさらに良い結果となる。痛みも危険性も全くない、とても安全な手技である。

脳の筋肉制御(ロック)が解除されると筋肉は元の柔軟さを取り戻し酸素と栄養がちゃんと供給されるようになる。酸素と栄養が筋肉に届くようになるとブラジキニンは消えてなくなり痛みは感じなくなる。

自由に動けるようになって痛みも無く、体も軽く痛みやこり、体調不良が軽減しそれらを感じていたことによるストレスが激減する。

同じように、腱にも腱紡錘というの伸展を感知するセンサーがある。腱紡錘は、これ以上、縮みすぎて負荷がかかると筋肉や腱が断裂するという危険を回避。筋肉を弛緩させる指令を出すのです。これは自己抑制と呼ばれる。

私たちの体は、無意識のうちに筋紡錘や腱紡錘が働いてバランスをとっているというわけだ。筋紡錘と腱紡錘の感度は脊髄が調節している。腱紡錘のほうがセンサーの感度が高いため、日常的には筋紡錘と腱防止が同時に働くことはない。つまり、正常なら筋肉は適度に緩んでいるということだ。

推拿・治癒理論Ⅲ

推拿・治癒理論Ⅲ【推拿伝授07】文責:気功整体・癒しの空間 古田島 正敏

その1.人の進化の過程

 人は進化の過程で、直立2足歩行という能力を獲得した。これは、地球という環境に適応し、他の生物との生存競争に打ち勝つための進化であるが、両手が自由になり、道具の使用や手作業が可能となった。その結果として脳が進化し、他の動物には無い、卓越した知能と能力を手に入れたのある。
この進化の過程は、重力という大きな課題との戦いでもあった。物事には常に2面性がつきまとう。よく効く薬にも副作用があるように、知能と引き換えに、失ったものもまた大きいのだ。
失ったものの一つが血流である。
他の動物では背筋、大腰筋(だいようきん、psoas major muscle)は単に体を支え、移動するためだけの働きがあれば良かったが、2足歩行により、抗重力筋として機能することになった。しかし、時間が足りなかったせいか?、4足歩行時の筋肉をそのまま使ったのである。
その結果、大腰筋は恥骨によって曲げられてしまったのである。地球広しといえども曲がった筋肉を持つ動物は人間だけである。
そのうえ、従来の脚を前に持ち上げる機能に加え、重力に逆らい背中を直立させる機能まで背負わされたのである。脊柱起立筋とともに、大腰筋が担う重力は大変なものであり、腰痛が起きるのは当然の結果である。つまり、人間は腰痛と言う宿命を背負って生まれてきたのである。
しかし、人種によっては腰痛に悩まないで済んでいる人たちがいる。いわゆる西洋人と呼ばれる人たちである。その違いは何か?。

 

その2.日本人と西洋人の進化の過程の違い

狩猟民族と農耕民族の差
NHKスペシャル「病の起源」シリーズで、「腰痛ーそれは二足歩行の宿命か」という番組を見た。人類は600万年前に二足歩行を始め、体重がぜんぶ腰や下肢にかかるようになり、腰痛を患うようになった。また手が肩からぶらさがるようになったため、自由に動かせるが、肩こりも起こるようになった。これがほぼ定説である。しかし、番組はこのことに疑問を投げかけた。
人間が二足歩行をするようになってから、背骨をつくる椎骨のあいだのクッションである椎間板に大きな負担がかかるようになり、腰痛が起きるようになった。体重72kgの人の場合、椎間板にかかる負荷は66㎏ほどだそうだ。それが前傾姿勢をとると、いっぺんに235kgに増えるという。なんと3倍以上になる。それは前傾したからだを支えるために背筋群がつよく収縮し、その力で椎間板が圧迫されるからだ。

 このような前傾姿勢を長く続けていると、椎骨が前方にすべったり、椎間板が後方にはみ出したりする。すると神経が締めつけられて腰背痛が起こる。番組ではメソポタミアの遺跡から出土した人骨に腰痛の形跡が見られることを示していた。一日2時間から4時間ぐらい粉を挽く作業をしていたためだろうという。農耕民族は腰を曲げて仕事をすることが多いので、腰痛が持病になってしまうのだ。

これに対して、アフリカの狩猟民族には腰痛がほとんどないという。一日20~30㎞ぐらい歩いて獲物を追いかけるが腰痛がない。腰痛があるのは、木から落ちたり、崖から落ちたりした者だけだった。研究者は、椎間板が適度に刺激されて水分を保ち、劣化しないからだろうと推測している。同じ姿勢を長時間つづける仕事がダメなのだ。
それでは日本人はどちらに属するのか?
われわれは、悪名高い日教組により、「日本人は農耕民族である」と習った。・・・・・とんでもない大嘘である。

 農耕が始まったのは、西洋の方がはるかに昔である。
農耕の起源について、最新の研究では、約1万5000年前に今の中国の長江流域で、稲作が行われていたと判明しているそうであるが、筆者が中学、高校の頃は、シリアのヨルダン川周辺で始まったとされていた。
通説ではあるが、約1万年前に西アジア一帯で麦の栽培が始まり、約6千年前くらいにはヤギ、羊の牧畜と共に、中央アジア、アフリカ、ヨーロッパに広がり、それぞれの地域にあった農耕が定着したそうである。
日本では、縄文時代後期から弥生時代(約2400年前)に農耕が始まったとされているから、どちらにせよ、日本で農耕が始まるはるか以前の時期である。
ちなみに、約1万5000年前に長江流域で起こった稲作がどんどん拡大し、6千年前に山東半島周辺まで広がったそうだが、日本には影響を与えなかったとのことだ。日本人は農耕民族で西洋人は狩猟民族ってのは、大嘘である。

日本人はマンモスを追って日本に渡来した典型的なハンターであり、鹿や猪を追って生活をしていた縄文時代、メソポタミアでは、すでにパンが焼かれていたし、三内丸山で、野山を駆け巡って狩をしていた頃、ローマには、街にパン屋があった。農耕が始まった時期とか地域には諸説あるが、日本で農耕が行われて穀物を食べるはるか以前より、西洋ではすでに農耕が行われていたのは、紛れも無い事実である。そしてこの歴史の違いがインスリンの質の違いとなり、農耕民族=西洋人には肩凝り、腰痛がないのである。

その3.病気の原因

インシュリンの質の差
 ここで人間の生きる力 「源」 をつくるエネルギーの話を挿入しよう。(筆者と同年齢の団塊世代はこの話は聞いておられない方が多いと思うので挿入しました。)

今、人間の力の 源、エネルギーのもとは、糖の分解で、力が湧いてくるという認識がくずれてきている。
「生きる力を作るエネルギー」 は、二重構造になっている」のである。
細胞には、2つのエネルギーが共存しているのである。従来の、糖の分解で力が湧いてくるという、「解糖系のエネルギー」と、もう一つは 「脂肪やたんぱく質、紫外線や野菜に含まれるカリウムなど様々な原料から出来ているエネルギー、即ち持続力のあるエネルギー」 である。
この無酸素で作る解糖系の生命体はブドウ糖だけで生成されている。つまり、糖は、たんなる、瞬発力のエネルギー源にすぎないのである。少し低体温で働き、瞬発力は出るが疲れやすい特徴がある。このような製造過程のため、身体では細胞分裂をする皮膚や骨髄、筋肉では速筋に多く分布している。危険から一目賛に逃げるときや、奮起するとき、瞬発力を発揮するとき、怒るときにはこのエネルギーが使われる。
次に、有酸素で、持続力のあるエネルギーとは、脂肪やたんぱく質、紫外線や野菜に含まれるカリウムなど様々な原料から出来ている。糖の18倍という高効率でエネルギーを生成している。快適な温度(35度以上)のもとで活発に働き、持続力があって疲れにくいのが特徴である。身体では心臓や脳、骨格筋(遅筋)などに多く分布し、日常生活での動作や、リラックスしているときにもこのエネルギーが使われている。
この二重構造のエネルギーの働きは、人間の成長に伴い変過し、男女の差に関与している。幼児や成長期の子供くらいまでは、瞬発力で分裂を繰り返す解糖系のエネルギーで生きているが、大人になるにつれて、持続力の有るエネルギーで生きるようになると、大人らしい落ち着きが出てくる。
解糖系は骨髄や皮膚の細胞の分裂にも使われているので、子供のときは成長を続けているので身長が伸び、皮膚もツヤツヤだが、大人になると、この持続力のあるエネルギーにシフトするので成長が止まり、老人になると分裂の少ない薄い皮膚になる。
男女の生殖器でも違いがあり、分裂の激しい男性の精子は解糖系が優位で、女性の成熟した卵子には持続力のあるエネルギーが極端に多い。
疲れたり、悩んだり、身体を冷やしたり、食生活が乱れるなど、心身のストレスになることは解糖系のエネルギーの頑張りの世界なので、それらのストレスを受けると低体温、低酸素になり、その状態が長く続くと、病気になりやすい。

何故、ここでこの話をしたかと言うと、糖の分解で得られる解糖系エネルギーは膵臓で作られるホルモン「インスリン」によって筋肉に伝達される。インスリンはまた、血液中のブドウ糖「血糖」の量を適正量に調整する役割を担っている。どうやって調整するかと言うと余った血糖を脂肪に変えて蓄積するのだ。
ここでまた話を挿入しよう。インスリンが「血糖」の量を適正量に調整できなかったらどうなるか?、と言う話である。日本人はこのインスリンの分泌量がもともと少なく、欧米人の半分から4分の1程度しかない。またインスリンの質も悪く糖質の分解能も低い。
何故ならば、西洋人が12,000年糖質を摂取し、インスリンの質もよく、分泌量も多いのに比べ、2,400年しか糖を摂取していない日本人はインスリンの質も悪く量も少ないのである。

インスリンは肥満ホルモンでもあるため、西洋人に比較して体も小さく、スリムである。日本人は例外もあるが、太れない体質なのである

分泌量の少なさ=エネルギー不足 を糖質をたくさん摂取することによって補ってきたのが日本人であるが、この糖質過剰摂取が、“糖化”(glycation)を引き起こすのである。グリケーションとは、過剰な血糖が、筋肉や内臓、皮膚、血管などのたんぱく質を時間をかけてやんわりと焦し、固くする現象である。ほぼ老化の原因でもある。筋肉は約1/3がコラーゲンで出来ているがこのコラーゲンを硬化させるのである。そして、脊柱起立筋や大腰筋の“糖化”=硬化が肩凝り、腰痛の原因である。グリケーションには前期と後期があり、糖の摂取を控えれば、前期にはコラーゲンの代謝期間である1年を経過すれば肩凝り、腰痛は消失する。しかし、後期にはコラーゲンはAGEs(最終糖化物質)となり、不可逆性であるため、元には戻らない。
マーカーとなるのは顔の皺である。顔の筋肉(表情筋)組成はコラーゲンが2/3であるため、糖化しやすく、AGEs化すると元には戻らない。つまり、顔に皺のある年代の方は残念ながら整体を受けて楽にはなっても、肩凝り、腰痛が完治することはないのである。

筆者は、肩凝り、腰痛のみではなく、頭痛や生理痛、ひざ痛、癌など、すべての血流障害とそれに伴う病気は、“2足歩行”と“糖化”が原因であると考える。

 

 

 

推拿・治癒理論Ⅱ

推拿・治癒理論Ⅱ 【推拿伝授06】文責:気功整体・癒しの空間 古田島 正敏

推拿は一言で言えば、骨格筋のうち、動脈の通り道であり、毛細血管が集積する遅筋を緩め、血流を促進する技術であり、その結果は代謝の促進である。
 どのような機序で血流が促進し、代謝が促進されるのかを知るためには、筋肉、血管、神経の構造とその作用を知らなければならない。
本章は「治癒理論Ⅱ・血管の構造と機能について」である。

血管の構造:
動静脈血管壁は、内膜、中膜、外膜の3層からなる。内膜は、単層の内皮細胞と少量の結合組織からなる。
中膜は、輪状に走る平滑筋と弾性線維からなる。太い動脈ほど弾性線維が発達しており、伸縮性と弾力性に富む。静脈では中膜が薄く、弾性線維は動脈に比べ少ない。
毛細血管は、ほぼ単層の内皮細胞からなり、物質の透過性が高いため、ここで物質交換が行われる。
毛細血管は、細動脈と細静脈を結ぶ、太さは5〜10μmと細い網目状の血管である。 血管壁は単層の内皮細胞からなっている。 この血管壁の細胞間隙を通して、血液中と組織で、酸素と二酸化炭素の受け渡しや、栄養素の供給と老廃物の回収など物質交換を行っている。

血管の種類:
血管は、心臓から拍出される血液を末梢に送り出す動脈、末梢から心臓に血液を返す静脈、動脈と静脈の間にあり動脈血中の酸素と栄養素を各組織に供給する毛細血管の3種類に大別できる

図1血管の構造

血管の構造:
血管の面積比は、動脈:毛細血管:静脈でおよそ1:700:2、全身の血液量の分布は、動脈に20%、毛細血管に5%、静脈に75%である。体循環と肺循環の血液量の比は、約3:1である。血管壁は組織学的には内皮細胞、平滑筋、線維(弾性線維と膠原線維)からなる(図2)

図2動脈壁の断面図

動脈壁の断面図
血液と直接接触する血管内腔はすべて1層の内皮細胞で覆われている。

動脈系(大動脈、動脈、細動脈)
内膜(単層の内皮細胞とその下にある少量の結合組織からなる)、中膜(輪状の平滑筋と弾性線維から構成される)と外膜(結合組織からなる)の3層からなる(図2)。静脈に比べ壁は厚く丈夫で伸縮性と弾力に富む。
動脈系はどこも弾性線維がよく発達しているが、大動脈で最もよく発達し、伸縮性に富み、心筋収縮による高い圧に対応する。よく発達した弾性線維がクッションとしての役割を果たす大動脈は、空気室血管( windkessel vessel )ともよばれる。
動脈が細くなるにしたがって弾性線維が少なくなり、平滑筋が多くなる。細動脈は交感神経支配を受けており、血圧に最も影響を与える部位である(抵抗血管といわれる)。

静脈系(大静脈、静脈、細静脈)
動脈と同様3層からなるが、高い圧を受けることがないので中膜が薄く、筋や弾性線維が少ない。静脈圧は低いので血液の逆流を防ぐため弁(半月弁)をもっている。

弁は下肢の静脈に多く、筋肉の収縮を利用する筋肉ポンプの弁として働き、静脈血が心臓に戻るのを助けている。静脈は全身の血液を貯留する(75%)ので、容量血管( capacitance vessel )ともいわれる。

門脈は、消化管(胃、腸)および脾臓からの血液を集めて肝臓に運ぶ静脈である。

毛細血管〔 capillary 〕
枝分かれした細動脈と細静脈を結び、細胞のすみずみに酸素や栄養素を供給し、代謝産物を回収できるように組織の深くまで網目状に分布している。他の血管壁と異なり、ただ1層の内皮細胞と周皮細胞から構成されている(図1)。このため物質の透過性が高く、物質交換に都合よくできている。

動脈は、毛細血管に分かれるまでにしばしば隣接する動脈と相互に結合し、交通ができている。これを吻合(ふんごう)といい、仮に血管の一部に閉塞が生じても、吻合部分を通って血流を確保できるので、血行障害は起こらない。
しかし、脳、肺、腎臓、網膜、内耳のように、動脈の枝が毛細血管に分かれるまで吻合をつくらないもの(終末動脈)もある。吻合をつくらない動脈が閉塞すると、それ以下の領域に血液がとどかず、組織に変性が生ずる。

冠状血管〔 coronary vessel 〕

心筋細胞は、心臓内を流れる血液から直接酸素や栄養を摂取することができないので、心臓には細胞を養う特殊な血管が張り巡らされている。これが冠状血管(冠血管)である(図3)。

図3冠状動脈

冠状動脈
冠状動脈 coronary artery の入口は大動脈弁のすぐ上にある。血液は、冠状動脈→毛細血管→冠状静脈を経て、冠状静脈洞 coronary sinus に集められ右心房に戻る。
冠状血管が動脈硬化や攣縮(れんしゅく)などにより血流が減少すると、その部分は酸素不足に陥り、心臓部や左肩に激痛が起こる。これが狭心症である。さらに血流が極端に減少したり、閉塞すると、その血管によって養われる細胞は壊死してしまう。これが心筋梗塞である。

血圧:
血圧とは、血液が血管壁を押している圧力のことである。圧力の単位はmmHgで表すが、圧力の低い静脈ではcmH2Oが用いられる(1mmHg=1.36cmH2O)。血圧には動脈圧、静脈圧、毛細血管圧などが含まれるが、一般に血圧というと動脈圧を意味する。
動脈圧が血液を流す原動力となる。動脈系は心臓から拍出された血液を毛細血管までできるだけ効率よく流れるようにする機能をもっている。動脈の主な機能は、①血圧の維持、②血圧変動の平滑化、③血流量分配の調節、である。

血流変動の平滑化
心室が拡張(弛緩)すると心室内圧はゼロ近くまで低下するが、この間でも血圧(拡張期血圧)は高く維持されている。これは動脈が弾性に富んでいるためである。心室の収縮期に拍出される血液は大動脈血管壁を伸展し張力を生ずる。
心室の拡張期には、血管壁に生じたもとに戻ろうとするこの張力(弾性復元力)が血液を圧迫し続けるので血圧は高く維持されるのである。
また、細動脈の血流抵抗も拡張期血圧を高く保つのに関与している。動脈硬化が起こり、血管壁が肥厚したり硬化が生じて弾性力が減少すると、心室の収縮期血圧が高くなり、拡張期血圧は低くなる。したがって脈圧は大きくなり、平均血圧は低くなる。

血流量分配の調節
主に細動脈の血流抵抗を変えることによって各臓器への血流量を調節する(微小循環参照)。

収縮期血圧と拡張期血圧(弛緩期血圧)
動脈血圧は(血圧)、左心室の収縮・拡張ごとに変動する。収縮するときに最も血圧が高いので収縮期血圧 systolic blood pressure (最高血圧ともいう)、拡張するときに最も低いので拡張期血圧(弛緩期血圧) diastolic blood pressure (最低血圧ともいう)という。
収縮期血圧と拡張期血圧の差を脈圧 pulse pressure という。
血圧は血液を流す原動力であるが、変動している場合は、その平均値が血液を流す真の血圧になる。これを平均血圧 mean pressure という。

平均血圧=拡張期血圧+(脈圧/3)

動脈血圧を決める因子

血圧(血圧差)=心拍出量×血管総末梢抵抗

電気工学におけるオームの法則(電圧差=電流量×電気抵抗)は、血管系にも適用でき、血圧(血圧差)は、血流量(心拍出量)と血流抵抗(総末梢抵抗)の積で導き出せる。
血液が流れるのは、動脈と細動脈、あるいは静脈との血圧差があるからである。静脈の血圧ほぼゼロに近いので、動脈の血圧はそのまま血圧差とみなしてよい(図1)。

血圧、脈圧は太いほど大きい。血圧の低下が最も大きい部位は細動脈である。これは細動脈が血流に対して最も抵抗が大きいことを示している(このため、総末梢抵抗を代表する部位といわれる)。静脈圧はゼロに近くなっている。

心拍出量を決める因子
血流量は、左心室が拍出する分時拍出量(1回拍出量×心拍数)である。分時拍出量は、1回心拍出量あるいは心拍数で決まる。1回心拍出量は、心筋収縮力や静脈からの血液還流量(静脈還流量)に影響される。結局、血流量(心拍出量)を決める主な因子は、心筋収縮力、心拍数、静脈還流量ということになる。

血管総抹消抵抗を決める因子
血管抵抗は、血液の流れやすさを表しており、血管系のなかで最も抵抗が高い部位は末梢血管(特に細動脈)である(図1)。つまり血管抵抗(総末梢抵抗)を決める因子は、細動脈の収縮・弛緩の程度である。
また、神経系活動・化学物質や血液の粘性も血圧に影響を与える。精神的に緊張したり、運動すると交感神経活動が高まり、また、副腎髄質からアドレナリンが分泌されることなどから血圧は上昇し、心拍数も増加する。

筋肉の硬化による血管圧迫:
 筋肉の凝りとは筋肉が緊張して固まり、ゆるめられない状態のこと。 筋肉はもともと伸び縮みする性質があるが、長時間のスマホやパソコンなどのうつむき姿勢で緊張が続くと、本来の弾力を失って、縮んだまま硬くこわばってしまう。怖いのは、ずっと緊張したままでいると脳がその状態を覚えてしまい、無意識で緊張を続けてしまうのだ。
では凝りや痛みを感じたとき、体の中では何が起きているのだろうか?、筋肉が緊張して硬くなると、血管が圧迫されて血流が悪くなり、疲労物質や老廃物が筋肉中にたまる。これにより凝りや痛みが発生すると考えられる。意外と知られていないのが脊柱起立筋による大動脈の圧迫である。本来、動脈系はどこも弾性線維がよく発達しているが、大動脈で最もよく発達し、伸縮性に富み、心筋収縮による高い圧に対応するはずであるが、長時間地球の引力に対抗し、コチコチに硬くなった脊柱起立筋は大動脈を圧迫し、その結果、「血流=血圧/血管抵抗」の法則で大きく血流を阻害するのである。これが冷え性をはじめとする血流障害の根本原因であると考えられる。一度でも推拿施術を経験した人は、背中を緩めることにより体中がぽかぽかと温かく成るのを体験しているはずだ、これが大動脈の圧迫が取れ、血流が良くなった証拠である。

 

推拿・治癒理論Ⅰ

推拿・治癒理論Ⅰ

【推拿伝授05】文責:気功整体・癒しの空間 古田島 正敏

推拿は一言で言えば、骨格筋のうち、動脈の通り道であり、毛細血管が集積する遅筋を緩め、血流を促進する技術であり、その結果は代謝の促進である。
どのような機序で血流が促進し、代謝が促進されるのかを知るためには、筋肉、血管、神経の構造とその作用を知らなければならない。
本章は「治癒理論Ⅰ・筋肉について」である。

筋肉は瞬発力を生み出す速筋と、重力に逆らう方向に働き持久力を生み出す遅筋から構成されている。

骨格筋は、動物の筋肉の一分類であり、骨格を動かす筋肉を指す。

骨格筋は、細長い筋繊維とその細胞間を埋めて束ねる結合組織からなる。

筋繊維(筋線維とも)はそれぞれが一個の細胞で、筋細胞と呼ばれる。筋細胞は多くの核を持っている多核細胞(合胞体)である。 筋繊維の集まりが筋束を構成し、筋束の集まりが骨格筋を構成する。

骨格筋は骨格に対して、関節をまたぐように結びついている。その結びつく関節との関係からは、大きく屈筋と伸筋に分けられる。前者はその関節の曲がる側についており、縮むことで関節が曲がるようになっている。後者はその反対側につき、縮むと関節が伸びる。筋肉は収縮時に力を出すが、自分自身で伸びることはできないので、屈筋と伸筋が互いに拮抗的に働くことで関節の曲げ伸ばしが行われる。
骨格筋の形状はさまざまであり、紡錘筋、羽状筋、半羽状筋、鋸筋などに分類される。
また骨格筋には枝分かれしているものがあり、筋頭(骨格筋の、体の中心に近い部分)の数で分類することができる。筋頭がひとつのものを単頭筋、筋頭が二つのものを二頭筋、三つのものを三頭筋、四つのものを四頭筋と呼ぶ。

筋線維には大きく2種類あり、ミトコンドリアに富んで酸素を利用した持続的な収縮の可能な遅筋線維(Type 1、赤筋、色の原因は、酸素結合性タンパク質、ミオグロビンである)と、ミトコンドリアは比較的少なく解糖系による瞬発的な収縮の可能な速筋線維(Type 2、白筋)にわけられる。速筋線維の中でもやや持続的収縮に向いたものはType 2a、そうでないものはType 2X、Type 2bとさらに細分される。最も速い速筋繊維はType 2bである。遅筋線維、速筋線維はそれぞれ遅筋、速筋と呼ばれることが多い。さらには、両者の性質を備えた中間筋の存在も認められている。
 骨格筋は運動神経に支配されており、運動神経から信号を受けると収縮して力を発揮する。1本の運動神経とそれに支配される筋線維をあわせて運動単位あるいは神経筋単位と呼ぶ。運動神経1本あたりの筋線維の数は、指などの精密な動きをする筋肉では少なく、大腿など大きな動きをする筋肉では多い。骨格筋線維を直接支配している神経線維は、α線維と呼ばれる径の太い(神経伝達速度の速い)ものである。また、骨格筋には筋紡錘、ゴルジ腱器官と呼ばれる感覚器が存在する。

筋肉のエネルギーATP

人の筋肉が動く直接のエネルギーを作るのは、アデノシン3リン酸(ATP)である。
アデノシン3リン酸が分解されてアデノシン2リン酸になるときに出るエネルギーによって人の筋肉は動いている。

 筋トレや短距離走など無酸素運動でも、ジョギングや遠泳など有酸素運動でも、アデノシン3リン酸から筋肉を動かすエネルギーを作るのは同じである。

体内にあるATPの量は少なくて運動すると、ATPは1~2秒で無くなる量である。
エネルギーのATPは1~2秒動いたら無くなる量であるが、1~2秒動いてすぐ動けなくなる人はいない。
これは、筋肉が動くとATPが使われる一方、体内ではATPを作り続けているからである。ATPを作る工程によって、無酸素運動と有酸素運動が分かれる。
ATPの作り方を1枚の図で書くと左図のようになる。
ATPの作り方は、ATP-CP系、乳酸系、有酸素系の3つだけで、ATP-CP系と乳酸系がいわゆる無酸素運動になって、短時間の運動で機能する。
ATP-CP系と乳酸系だと、ATP-CP系のほうがより短時間の運動で使われる。

 

①ATP-CP系
ATP-CP系のATPは上で紹介したアデノシン3リン酸、CPはクレアチンリン酸のことである。
運動を始めると、筋肉の収縮のためにATPが使われていく。
一方で、ATPがADPに分解されるのと同時に体内のクレアチンリン酸が分解されていく。
クレアチンリン酸が分解されることで得られるエネルギーによって、ADPがATPに再合成される。
ATPが使われるとクレアチンリン酸が分解されて、そのエネルギーを使って再びATPを作る。
そのため、ATP-CP系と呼ばれる。
とにかく反応が早く運動開始時や短時間で強度の高い運動で活躍するが、クレアチンリン酸の貯蔵量はそれほど多くなくATP-CP系だけだと10秒と持たない。ただし、実際には、ATP-CP系と同時にほかの機構も動いて、ATPとクレアチンリン酸が作り続けられているのでATPが尽きたり、クレアチンリン酸が尽きたりすることはない。
このクレアチンリン酸を体内に多く貯蔵しよう!という目的でクレアチンサプリメントも出ている

②乳酸系
つぎに、乳酸系である。解糖系、乳酸解糖系などとも呼ばれる。
この反応では乳酸はATPを作るエネルギーにはなっていないが、でも、乳酸系と呼ばれる。
グリコーゲンやブドウ糖からブドウ糖6リン酸が作られて、ピルビン酸になるときにエネルギーが得られる。ピルビン酸の状態だと体に貯めにくいので、乳酸が体に貯まっていく。
この乳酸は「乳酸が貯まる。」のように疲労がたまる意味で使われているが、本当は乳酸は、ピルビン酸になって有酸素運動のエネルギー源になる。
急激な運動をすると、乳酸が貯まっていくが、乳酸が溜まると、乳酸系の反応が進みにくくなって体がしんどくなる原因になる。筋肉中にたまった乳酸は筋肉を収縮するのである。筋肉が縮むと血行が悪くなり疲労を感じるのである。

最後に有酸素系である。
まず、ピルビン酸と脂肪からアセチルCoAが作られる。
乳酸系の運動で作られた乳酸もピルビン酸に変化する。
アセチルCoAは、アセチルコエンザイムエーのことである。
アセチルCoAが、ミトコンドリア内のクレブス回路に入っていく。
このクレブス回路と電子伝達系とよばれるシステムによって、エネルギーが取り出される。
図を見てもらうと、酸素が入っているが、ATP-CP系や乳酸系では酸素は書かれていない。文字通り、「有」酸素ということで、脂肪がエネルギーになる。
クレブス回路は、別名TCA回路やクエン酸回路とも呼ばれる。

ATPを作るシステムを紹介してきたが、3種類あるということは、3種類に特徴があるということである。
ATP-CP系>乳酸系>有酸素系の順でエネルギーの供給速度が速く瞬発的な運動に適している。有酸素系は瞬発的な運動に向いていない。
一方、供給時間は逆で、ATP-CP系は7秒、乳酸系は33秒、有酸素系は無限大である。有酸素系は呼吸により取り込んだ酸素を使うし、脂肪があればエネルギーを作り出せるからエネルギー供給は無限になるが、酸素を運ぶのは血流であるから、血流の悪い人は有酸素系エネルギーを十分使えず、脂肪が燃えにくいということになる。